日本でクラウドファンディングがはじまってから11年が経ち、広く利用されるようになってきました。「新しい取り組みにかかる資金を調達する」といったクラウドファンディングの代表格とも言える目的に加え、最近では、新規顧客獲得, 既存顧客とのエンゲージメントの増加など、さまざまなユースケースも見られる様になってきました。
これまで市場のプラットフォーマーは、クラウドファンディングを普及させるべく、資金需要サイドについて考えを深め、価値提供することにリソースを投下してきました。
市場が成立したここから、さらなる発展に向けては、資金提供サイド(支援者)についても考えを深め、提供価値を拡大するべきと考えており、「クラウドファンディングにおける支援とはどういった体験なのか」について、自分なりの考えをしたためます。
価値の総量
クラウドファンディングのプロジェクトを支援するという体験の最大の特徴は、あらゆる経済活動の中でも、 ”享受する価値の総量が大きい” 事にあると考えています。
以下、価値の総量を大きくする要因を挙げていきます。 タイトルは一番好きな三番目から取りましたー
1. 価値を享受する期間が長い
ネットで買い物をしたら明日には届く世界ですが、クラウドファンディングでは3ヶ月後、半年後ということも珍しくありません。この期間、活動報告という形でクラウドファンディングの実行主体から進捗の共有を受ける事になります。
活動報告を読むことは、生産されたものを消費するだけでなく、生産プロセスに関わった支援者というステークホルダーとして、プロジェクトに関与することと言えます。
ここでは、苦労してプロトタイプが完成した話や、予定されていた物件が取得できず急に対応した、等の紆余曲折のストーリーを受け止めながら、リターンが提供されるのを待ちます。
リターンの品やサービスを消費するまでの期間も、支援者にとっては価値があり、したがって価値を享受する期間は長くなります。
2. 非コモディティ
現代は物質的に満たされており、モノやサービスの価値は同質化・均一化しています。
生産された品として商品棚に並び、それらを手にとり消費するとき、また別の何かであったとしても、消費者にとっては殆ど同じ価値になってしまっています。経済活動が、無駄のない効率さを追求した結果、あわせて削ぎ落とされてしまった物語とも言えるでしょうか。
しかし、クラウドファンディングにおいては、そのプロジェクトを立ち上げた背景、かける想い、実行主体の個人的な感情、生みの苦しみなど、リターンとして受け取るモノとは別の、サイドストーリーが存在しています。
例え同じモノであっても、サイドストーリーは固有のものであり、これが強く表現されるクラウドファンディングを通じて消費するとき、その価値は鮮やかになり、大きな存在感をもつことになります。
3. 自己表現的
クラウドファンディングの支援では、自分が賛同するアイデアや活動に対して、身銭を切ることで支援者というステークホルダーとなり、生産のプロセスにコミットしています。
この行為により、自分がどの様な価値観を持っているのか、何に賛同する人間であるのかを表現することができます。
自分自身を何らかの形で表現する欲求、自己表現によって自己を十分に認識することは難しく、アートやダンス、文章など、才能や努力を必要としますが、クラウドファンディングではお金という最も汎用的な価値交換の手段をもって実現することができます。これは、寄付やサステナブル消費といったこととも共通点があるかもしれません。
何かを成そうとしている実行主体を支援し、その実現に貢献することで、アイデンティティを認識することができ、対価としてのモノやサービスを受け取ることができるなんて、とても贅沢な体験だと感じます。
4. エンゲージメントがある
1~3を伴った消費によって、クラウドファンディングの実行主体と支援者は、例えるならお店と常連さんのような、”消費者” とは異なった、エンゲージメントのある関係性となります。
ずっと通っていたわけではないのに、知ったのはつい最近なのに、思い返すと温かみと存在感のある、そういった特別な気持ちを抱くことができます。
そんな関係性がより多くあれば、どれほど豊かな人生になるのでしょうか。
私たちプラットフォーマーには、まずはリスクをとる支援者が安心できる環境を構築すること、そしてそれを前提としつつ、価値の総量を大きくしている4つの要因を最大化するためのUXにコミットしていくことが求められていると考えます。
この努力によって、クラウドファンディングのファンを増やし、CAMPFIREというコミュニティを健全に育て、より成功しやすい、挑戦を後押しできるプラットフォームにならなくてはなりません。
個人的には、ここまで書いてきた様な、コンサマトリーで意味的価値のある消費体験がまじで良いと思っていて、人生を使って「これっていけてない?」という問題提起をしていきたい